※このストーリーは、過去エピソードのネタバレを含んでいます。
過去のストーリーをクリア後、挑戦するのをオススメします。
テッカニンの襲撃から3カ月が経った。
あれからこれといった事件もなく、ポケ学探偵団たちは普通の学生として学校生活を謳歌していた。



こんな日々がしばらく続くと思われていた時、再びタイラントの牙は彼らたちに向けられることとなる。

いってきま~す!


いっけないもうこんな時間!学園に急がないと!

(タッタッタッタッ…)

ハァ、ハァ…なんとか始業までには間に合いそうね。

カァ・・・カァ・・・カァ・・・

ん…?なにかしら、あの大きな黒い影?

カァ・・・!カァ・・・!カァ・・・!


こっちに向かってきている!?
あれは…ヤミカラスの群れ…?

数は10…いや、20…!?
とにかく逃げなきゃ!

カァ!!カァ!!カァ!!

うっ!(囲まれてしまった…)

まって、あなたたち、私になんのy

ドガッ! ズガッ! ドガッ!

うっ…!

バタリ…。

…ターゲット確保。

ep5 「キルリア誘拐事件(前編)」
XXXX年12月10日
8時15分
ポケモンクイズ学園 教室

はい、では出欠を取りますね。

キルリアさん…あら、キルリアさんはお休みかしら。

あれ、キルリアが学校を休んだことなんてないのに、珍しいなぁ。

確かにな。
ピカチュウ、何も聞いてないのか?

うん…遅刻かな?
それとも、風邪でも引いたのかもしれないね。

え~では次、チェリムさん…
あ、チェリムさんは警察署に寄るから遅刻するって連絡があったわね。

チェリムが警察署?

いや、これは昨日俺たちにも話してたぞ。
証拠品のパソコンを引き取りと、今後の注意説明を受けるって言ってたろ。

あれ、そうだっけ…えへへ。

(パソコンのデータも強制的に初期化されるって言ってたな…。
チェリム、今頃泣いてるかもしれないな。)

・・・・・・・

では、一限目の授業を始めます。
一限目は『進化』についてね。

・・・なので、ポケモンは進化をすると、身体能力が大幅に上がったり、覚えられない技が覚えられるようになったりするの。

進化をすることで、タイプが変わることになるポケモンも存在するわ。

進化はいずれ、君たちも迎えることになる人生の大きな分岐点。
どうしたら進化できるか、進化したら自分がどう変わるか、しっかり両親に話を聞いておきましょうね。

・・・・・・・

キーンコーンカーンコーン…

おっと、もうこんな時間ね。
続きはまた明後日やりましょう。

結局キルリアは来なかったね。

風邪でも引いたんだろう。
学校終わったらお見舞いに行ってやろうか。

そうだね!ゴビットもそれでいい?

・・・・・・・!

XXXX年12月10日
10時20分
?????????????

兄貴、例の少女が目を覚ましました。

…そいつをここに連れてきな。

よォ、ようやく目覚ましたか。
悪ィな、俺の若い衆が手荒な真似しちまってよ。

…あなたは…?

俺か?
ゾロアークのお友達と言えばピンとくるかい?

!?
まさか…タイラントの一味!?

察しが良くて助かるねェ。
あのバカはあんたのことを高く買ってたぜ。

…。

ま、俺個人としては別にアンタにゃ恨みは無ェが、俺はアンタの兄貴と話がしたくてね…。

お兄ちゃん…?

ちょっとあんたに協力してもらいたくてねェ。

…あなたたちに、私が手を貸すとでも?

嫌なら嫌でいいんだぜ?
ただ、断る場合は代わりにあんたの仲間の命を差し出してもらうことになるがね…。

!?

あんたらのリーダーはピカチュウ…だっけか?
あんなネズミ一匹、命を絶つのは造作もないからなァ。

…協力って、私は何をすればいいの…。

カカカ、話が早くて助かるぜェ…!

XXXX年12月10日
10時30分
警察署 指導室

じゃあ、これがチェリムくんのパソコンね~。
二度とデータを盗んだりしてはいけないね~。

はい…。
本当に申し訳ありませんでした。

ガチャ…

失礼するよ。

あ!

警視正!
こちらにいらしてたのね~?

うむ。
午後の会議のために早めに着いたのだが、チェリムくんがこちらに来ていると聞いてね。

エルレイド警視正…
この度はご迷惑おかけいたしました。

ははは、チェリムくんに反省の色がなければ説教しようと思っていたが、タブンネにこっぴどく絞られたみたいだね。
私からは何も伝えることがないようだ。

プルル…プルル…

失礼。
…はい、こちらエルレイド。

うむ…妹から?
…大丈夫だ、繋いでくれ。

(!
キルリアから連絡?)

もしもし、キルリアか?

…よォ、久しぶりだな、エルレイドさんよ。

!?
お前は…?

カカカ、この声に覚えがないかい、悲しいねェ。

だが、俺はあんたのことを忘れたことはねェぜ。
なんせ、俺らの”親の仇”なんだからなァ。

あんたは俺たちのボス、バンギラスを逮捕し「警視正」にまで上り詰めた。
カカカ、大層なご身分だなァ、オイ。

そうか…あれから名前を聞かなくなったが、更生はしていなかったようだな…。

久しぶりだな、ドンカラスよ。

■なまえ:ドンカラス
■ぶんるい:おおボスポケモン
■タイプ:あく/ひこう
■とくせい:じしんかじょう

獲物を 捕るのを 失敗したり 裏切った 子分の ヤミカラスを どこまでも 追い詰め 処分する。

ド、ドンカラス!?

(シッ!)

(は、すいません!)

…オイ。
俺はアンタの二人で話がしてェんだが、周りに聞いている奴がいるのか?

いや、私一人だ。

カカカ、ならいい。

(タブンネ。
今すぐ携帯の共有システムで俺と奴との通話を確認し、録音しろ。
この件は他の誰にも伝えるな。)

(は、承知ね~!)

(すいません、ドンカラスって?)

(…ゾロアークと同じ、タイラントの幹部ね~。)

(タ、タイラントの幹部…!)

さて、エルレイドさんよ。
今の状況はアンタほどの男なら察しがついていると思いたいが…?

…ああ、要求はなんだ?

カカカ、兄妹共に、話が早くて助かるねェ。

…大方の予想はついている…。
バンギラスの開放…とでも言いたいだろう?

まぁ、俺たちにとってはそれは最高の結果だ。
ただそんなことはエルレイド、アンタの一存で決められることでもないんだろ?

…。

人質を取ろうが、ボスの開放はなんざ十中八九、アンタの上の存在が認めるわけがねェ。
ましてや、こんな少女の命1つの釣り合うわけがねェからな。

俺ァその辺の価値ってのは分かっているつもりだ。
ダーテングのバカとは一緒にしないでもらいたいね。

…では改めて問おう、目的はなんだ?

カカカ、さすがにボスの開放とまでは言わねェ。
ボスの監獄に使役している、看守の名簿が欲しい。

名簿…?

それさえあれば、俺たちはボスの脱獄を成功させることが出来る。
言ってる意味は分かるな?

…ゾロアークか。

カカカ、そう、ゾロアーク及び、傘下のゾロアたちは姿を偽ることができる。
誰に看守として偽れば良いか…、分かればこんなに簡単な脱獄はねェ。

あんたは名簿の資料を鞄に詰めて、信用の出来る部下に持たせて「この鞄を届けて欲しい」とでも言えばいいんだ。

そして俺たちがその部下を襲い、鞄ごと奪い情報を入手する。
こうすることで、人知れず名簿が俺たちに渡るってワケだ。

…。

もし情報漏洩がその一件と発覚したら、アンタにも多少の責任は問われるかもしれねェが、すべては無能な部下の失態として見てくれるだろうぜ。

お望みならその部下を殺してやってもいい。
アンタの社会的な体裁も考慮した、いい案だろ?

馬鹿な。
そんな取引、正義を司る警察として応じられるわけがない。

警察?
オイオイ、エルレイドさんよ。俺は警視正と交渉している訳じゃない。
キルリアの兄貴として問うているんだぜ?


…。

ボスが仮に脱獄したとしても、新たな被害が生まれるかは分かったことじゃねェ。
しかし、ボスが開放できない、すなわちアンタが交渉に応じなかった場合は…キルリアは、確実に殺す。

どちらが確実に命を救えるか、よ~く考えてくれよな。

…了解した。
すこし返答に時間をもらえないか。

…ああ、いいぜェ。
アンタにも準備ってものがあるからな。
ただし返事は今日中に貰いたい。

それと、アンタがこの時間内に警察の部下を使って機動的に俺たちを探すのは止めてもらおうか。
そういった動きが見えれば、交渉を待たず妹を殺す。

警察には、俺たちタイラントの部下もスパイとして潜入しているからなァ。
アンタの動きには敏感に察知させてもらうぜ。

…ハッタリのつもりか?

そう思うならそれでもいい。
この約束を離反した時点で、俺たちの取る行動は決まってるからなァ。

それとも、また例の探偵団とやらでも泣きつくかい?
カカカ、それは別に構わねェけどな。
ダーテングとテッカニンの借りもあるしねェ。

…馬鹿な。

まァいい。
今後の連絡は今通話しているキルリアの携帯を介して行うものとする。

いい返事を期待しているぜェ…エルレイドさんよ。

ピッ…ツー…ツー…

え、エルレイド警視正…。

…タブンネ、そしてチェリム君も聞いていたか…?
この件は他言無用でよろしく頼む。

も、もちろんです。

け、警視正…どうするおつもりね?
私に何かできることがあれば…。

…いや、この件はすべて私の問題だ。
妹の命がかかっている以上、むやみに警視正として指示を出せない状況下にある。

しかし、バンギラスの開放される事態に発展したら、社会に与える悪影響は計り知れないね~…。

…すまないが、少し一人にさせてくれないか。
タブンネ、午後からの会議はすべて急用で欠席すると伝えてくれ…。

りょ、了解ね~!

ガチャ…バタン!

タブンネ刑事、幹部のドンカラスって奴はいったい…?

…バンギラスの信頼の高い、ゾロアークとドンカラスは、タイラントの幹部として警察庁の中では有名だったね~…。

特にドンカラスは、残酷かつ狡猾なポケモンとして容疑の数も多く、指名手配中のポケモンね~…。

そ、そんな奴に、キルリアは…!

…。

タブンネ刑事、お願いです。
今の会話の録音データを複製して、自分に頂けませんか。


そ、そんなこと…。

出過ぎた真似なのはわかっています。
でも、キルリアは僕たちと苦楽を共にした仲間ですから。
指を咥えて黙っているわけにはいけません!

さっきの会話には、捕らわれているキルリアの場所を示す、ヒントがあるはずです!
それを、僕たち探偵団が特定してみせます!
どうか…。

…。

(さっきの会話…。)

それとも、また例の探偵団とやらでも泣きつくかい?
カカカ、それは別に構わねェけどな。
ダーテングとテッカニンの借りもあるしねェ。

(会話の最中、ポケ学探偵団の話をあえて出したのは…。)

(思えばタイラントは、いわばまだ学生たちの集まりでもあるポケ学探偵団を相手に、何度も辛酸を舐められている状態だったね~…。)

(そう、タイラントが取り返したかったものは、ボスであるバンギラスと同時に、犯罪組織タイラントとしてのプライド…!)

(警視正は立場上、彼らに頼ることは絶対にない…。
ならば、彼らの推理力、行動力、そして勇敢な精神を最も理解しているのは…!)

…チェリム君、後で君のメールアドレスに録音ファイルを送信するね~。

この勝負、君たちに賭けてみたくなったね~…。
何か分かったことがあれば、私に連絡を頂戴ね!

はい!
ありがとうございます!

(必ず…救って見せる…!
待ってて、エルレイドさん、キルリア!!)

XXXX年12月10日
10時40分
?????????????

ご協力ありがとうよ、妹ちゃん。
あんたのおかげで、交渉はスムーズに進みそうだ。

…なんてやつなの…。

カカカ、恨むのなら、エルレイドの妹として産まれてきた自分の運命を恨むんだな。

…なによ、それ…。

本来はエルレイドみたいな警察の重役は、身内の情報を表に出してはいけねェんだ。
こういう事態が起こりえるからだ。

だがエルレイドはお前たちを助けるために自ら出動した。
テッカニンほどの犯罪者を捕えるなら、相応の実力がないと意味ねェからな。

…。

結果的にテッカニンは最高の情報を我々に提供したのさ。
エルレイドの妹「キルリア」という最高の交渉材料の存在をなァ!

!!

カカカ、さぁーて、あんたの兄貴は交渉を呑んでくれるのかね…。
楽しみになってきたぜェ…。

…許さない…あなたは…!(ギロリ)

おー怖い怖い。
この状況でまだ俺に敵意を向けるとは、流石はエルレイドの妹だ。

だが、あんたにしばらく用はねえ。
オイてめぇら、こいつを両の手足を縛れ。

人質に舌を噛み切られても困るからな、念のために目隠しとさるぐつわもかませとけ。

へへっ、了解!

(くっ…ごめんなさい、お兄ちゃん…。)

XXXX年12月10日
12時30分
ポケモンクイズ学園 探偵活動室

…そういう状況になっている。

キルリアが…そんな…!

…なるほど、エルレイドの妹としての立場を利用されたわけか。

…!!

早く助けに行かなきゃ!

そう。
だから僕たちは、キルリアの居場所を特定しなくてはいけない。

そして、手がかりはこの録音データだけか…。

いや…手がかりがあるだけ十分!
このテープを擦り切れるほど再生してでも、手がかりを手繰り寄せるぞ!

…そうだな、すまんな弱気になって。

じゃあいくよ、再生するね…。

~いい返事を期待しているぜェ…エルレイドさんよ。

…以上がドンカラスとエルレイドさんの録音通話だ。

…犯人の目的ははっきり分かったが、キルリアの場所、すなわち敵の本拠地を示す情報は特になさそうだな…。

うん…とりあえず繰り返し聞いてみよう。

XXXX年12月10日
12時30分
?????????????

(く…。)

(…手足と目と口を完全に塞がれてしまった…。
何も見えないし動けない…。)

(でも、私はこのまま人質として、お兄ちゃんに苦渋の選択をさせるのは嫌だ…!)

(何か…私にできることがあれば…!)

(!
そういえば…!)

(人質として目を覚ました時、ここは何かいつもと違う、異様な空気を感じる…。)

(でも私にとってはとても、落ち着く空間…。)

(ここは一体、どこなの…?)

…ズキン!

(!)

(今、脳を焼くような強い波動を感じた…!)

(これは、アルファ波(※)…?どこからか念力を感じるわ…!)

※アルファ波…ポケモンの脳から発する脳波のこと。

(…間違いない…!
遠くない場所に、強い念力を持ったエスパータイプのポケモンがいる…!)

(このポケモンに思念(テレパシー)で状況を伝えられれば…!)

(私からも念力を発信してみよう…気づいてくれるかな…。)

ぐにゃ…

(!!)

(今、何かが念力に反応した手ごたえがあった…!?)

(ぐにゃって曲がるような感触…。)

(分かった!これは念力に強く反応する…アレだわ!)

キルリアの指す”アレ”を入力してください。

(これは間違いなくスプーン!)

(念力に適応し、自在に曲げることが出来るアイテム…。
私も使ったことはなかったけど、こんなに簡単に反応するなんて…!)

(!
分かった!近くにいるポケモンの正体が…!)

(このスプーンの持ち主は…!)

このスプーンの持ち主を答えてください。
■なまえ:ユンゲラー
■ぶんるい:ねんりきポケモン
■タイプ:エスパー
■とくせい:シンクロ

体から 特別な アルファ波が 出ていて 側に 近寄るだけで 頭が 痛くなってくる。

…。

フム。
私の意思なくスプーンが勝手に曲がりおったが…。
何事じゃ?

ワシが無意識に曲げたのか?
まだまだ集中力を高める修業が足りんの…。

ぐにゃ!


また勝手に!

ぐにゃ!ぐにゃ!

いやこれは…外部の念力によって反応している?

…エスパーポケモンの仕業じゃな?
どれ、話を聞いてみるか…。

(ハァ、ハァ…。これだけスプーンをいじくりまくったら、流石に不自然に思うはず…。)

(気付いて、ユンゲラーさん!)

お主か?さっきからワシのスプーンをいじくる者は?

(!!今、テレパシーを受け取った!)

(ありがとう、ユンゲラーさん!後はこのテレパシーで情報を伝えられたら…!)

ゴ・・・・イ、ワ・・・ハ・・・ア・・・

(ハァ、ハァ…。ダメだ、ユンゲラーさんみたいにうまく言語化できない…。)

…フム。
このポケモンは思念にあまり慣れていないようじゃが…。

まだ幼いポケモンかのう?
それとも、集中できない体勢や状況、精神状態なのかもしれぬ。

ワ・・・・マ・・・ゴ・・・・ナ・

…フム、これは困ったのう。

タス・テ・・・・

…!
今、伝えたかったことは「助けて」…?

まさかこの思念は、SOSのサインかもしれぬ…。

フム。お主とは思念で意思疎通をするのは困難のようじゃ。
なので、形式を変えよう。
ワシからの問いかけに対して、「はい」か「いいえ」で答えてほしい。
「はい」ならここのスプーンを曲げてくれればいいからの。
大丈夫かの?

これならどうじゃ?

ぐにゃ…

…よし。

お主は今、助けを求めている?
ぐにゃ…

やはりSOSのサインじゃったか…。

お主は今、身動きが取れない、思念もまともにできない状況下にいる?
ぐにゃ…

フム。
かなり切羽詰まった状況と見受けられるの。
何かの事件に巻き込まれたのかもしれぬ。

お主は、自分の居場所が分かる?
…。

…これはNOのようじゃ。

自分がどこにいるのか分からないようじゃが…困ったのう。

…こんな情報では、警察に電話したところで、痴呆のおじいちゃんに勘違いされかねんわい。

このポケモンの知り合いに状況を伝えられればあるいは…。

お主の今の現状を、知っているポケモンは他にいる?

(!…。ピカチュウくんたちに伝えれば、きっと分かってくれるはず…。)

ぐ…にゃ…

なるほど…仲間はいるようじゃ。

しかし今、力なくスプーンが曲がったのう…。
もしや念力に限界が…。

(ハァ、ハァ、ハァ…。ダメ、意識が飛びそう…。)

(もう長くは持たない…。
ならば最後に念力を最大限まで振り絞って、ユンゲラーさんへ仲間の居場所を伝えるわ…!)

(私の仲間…ポケ学探偵団のみんななら、きっと私を見つけてくれる…。)

(いつも、どんな時だって逞しく、信頼のできる優しい仲間…それがポケ学探偵団なんだもの…。)

(お願い…うまく伝わって…!)

ポ・・・・・・

ポ・・ンクイ・ガクエ・・ナ・マガ・・

…学園?
お主は学生だったのか?
学園に仲間がいるのか?

今までで一番思念の精度が良かった…
これは最後の力を振り絞った念力に違いないのう…!

ありがとう。
お主のことはワシが必ず仲間に伝えよう。
ゆっくり休んでおくれ。

(うまく伝わったのかな…。
ありがとう、ユンゲラーさん…。)

(クラッ)

バタッ…


おいおい、人質が気絶しちまったぜ。

まぁ、こんな状況だからしかたねぇか。
同情するぜ…ケケケ。

…最後の言葉を補完すると
「ポケモンクイズガクエンニナカマガイル」
で間違いなさそうじゃ。

ポケモンクイズ学園…少し遠いが、直接行ってみるしかないのう。

電話では、万が一迷惑電話と判断された場合、状況が伝えられなくなるからの。
しかし一体、誰に伝えればよいやら…。

XXXX年12月10日
14時45分
ポケモンクイズ学園 探偵活動室

・・・・・・。

…はい、これで28回目の再生だよ。
どうだった?

いや…なにも。

…。

…チェリム、最後のドンカラスの発言のところだけ、音量上げてもっかい再生できる?


何か分かったのか?

いや…ただの気のせいかもしれないけど…。

わかった。
ここだね。

~いい返事を期待しているぜェ…おす…エルレイドさんよ。

(ピクッ)


ピカチュウ、何かが引っかかるのかい?

ピカチュウは俺たちより耳が良いからな。
俺たちには聞こえない音もあってもおかしくなさそうだが…。

ドンカラスの話す間の時に、何か…掛け声のような音が聞こえる!

掛け声?

うん…!
「おす」って聞こえた!

「おす」…?
「押忍」のことかな?

…「押忍」は、主に空手道・剣道・柔道などの武道の関係者の間で使われる挨拶の一つだ。
タイラントの連中とはとても縁遠い言葉であることから、それは外部の音と判断して間違いないだろう。

ということは…。
近くに道場のようなものがあるってこと?

その可能性があるかもな。

コンコン…ガチャ…

失礼するわ。
ピカチュウくん、あなたにお願いしたいことがあるんだけど…。

キュウコン先生?
ごめんなさい、今ちょっと立てこんでて…。

そう…。
困ったわね、私にはこのおじいちゃんが言ってることが理解できないわ…。

おじいちゃんではないわい!
まったくもう、見かけで判断するでない!

オホホ、ごめんなさい。

(ユンゲラー…?)

ワシはエスパー少年からの伝言を伝えにきたんじゃ!
あやつは今、この学園の仲間に助けを求めとるというのに…。

はいはい、それで、そのお仲間というのは誰なの?

…すまん、それは分からんのじゃ。
だからこそ探偵団とやらにだな…。

エスパー少年…?

ねぇ、これってもしかして…!

ユンゲラーさん、お話をお聞きしたいのですが。
そのエスパー少年からテレパシーによるSOSがあったということでお間違いありませんか?

ほう!
君はなかなか鋭いの!
さすがはエスパーポケモンじゃ!

…分かった、キルリアの居場所が…!

ユンゲラーさん、あなたはこの街から来ましたか?

ユンゲラーが来た街を答えてください。

そうじゃ!やはり君は勘がいいの!

ネイティ!!

やった!
街を特定した!

ヤマブキシティはエスパータイプポケモンならだれもが知り、憧れる街だ。
そしてその街の端に、空手道場があることを俺は知っている!

つまり、ヤマブキシティにある格闘道場の周辺に、キルリアがいる可能性が高い、ということだね!

十中八九、それで間違いないだろう。

よし…!
じゃあみんな、ヤマブキに向かおう!
覚悟は出来ているね?

もちろん!

ああ!

・・・・・・・!

今助けにいくよキルリア…!
そして、これでタイラントとの決着も付ける!

XXXX年12月10日
15時00分
警察署

・・・・・・・・

(私は今…警視正として、そしてキルリアの兄として、究極の決断を迫られている…)

(バンギラスの開放など、到底許されることではない…。
しかし、対価として妹を犠牲にすることなど出来ない…。)

(ならば…私が今するべき事は…。)

ガチャ…!

失礼するね~!

…なんだ、ノックもせずに。

すいません、どうしても急ぎで伝えたいことがあって…。

…手短に頼む。

…申し訳ありません。
先ほどの誘拐の件について、ポケ学探偵団に協力を仰いでしまったね~…。


お前という奴は…!

…警視正、言うことの聞かない私はクビで構わないね~…。

でも、彼らはキルリアの居場所を特定に成功したね!

…!!
特定した…だと!?

場所はヤマブキシティの空手道場周辺。
周辺には廃ビルや怪しげな事務所がいくつか存在することから、どれかにキルリアちゃんがいると推定できるね~!

…。

タブンネ…再三にわたる背任行為で、貴様を懲戒解雇…と言ってやりたいところだが…。

…。

今回だけは、兄として例を言わせてもらおう。

警視正…!

探偵団たちにもお礼を言っておいてくれ。
そして彼らにこれ以上の協力を仰ぐのはやめておくんだ。

それは言ったのですが…。
彼らは言うことを聞かず、現場に乗り込もうとしているね~…。

なんだと!?

ご、ごめんなさいね~!

フーッ…。
もういい、状況は分かった。
あとは私が何とかする。

ハッ!
では一時、失礼するね~。

ガチャ…バタン!

ヤマブキシティの空手道場…か。
こんな時に名前が出るとはな。

…背に腹は代えられないか。

プルル…プルル…ガチャ!

押忍!
こちらヤマブキ空手道場!

お久しぶりです、師匠。
エルレイドです。

!!
エルレイドか!!!
懐かしいな、この野郎!

すいません、ご無沙汰しております。

ガハハ、ええって。
お前も警視正にまでなったんだ、いろいろと忙しかろう。

んで、突然なんだい?

はい、緊急でお願いしたいことがありまして。

お願い?

はい、これは警察としてではなく、私個人のお願いになるのですが…。

…詳しく聞かせてくれ。

なるほど。
状況はよく分かった。

…この案件は、かなりの危険が伴います。
命の保証もできません。
ですが…。

ガハハ、水くせぇなエルレイドよ。
お前の中での師匠は、弟子の心痛なお願いも断るほど薄情な奴なのか?

もちろん引き受けるよ。
あとは俺たちにまかせておけ。
体も鈍っていたところだ、ちょうどいい。

…ありがとうございます!
痛み入ります。

おう!
たまには道場にも顔出せよな。

ガチャ…

…ずいぶん盛り上がっていたようだが、誰だ?

エルレイドの奴から連絡がきたぜ。

おお!エルレイドか!
久しぶりに顔がみてぇな。

ああ、だが今はそれどころではないらしい。


どういうことだ?

なるほど、悪の組織に子供のポケモン4匹が乗り込もうとしているわけだな。

そう、そしてこの事件に対して、警察は静止できない状況下にあるようだ。

部下には頼れない…だから現場から近い、俺たちに白羽の矢が立ったわけだな。

ああ、俺たちの愛弟子であり、恩人でもあるエルレイドの頼みだ。

恩人…か。
そんな言葉では言い表せないくらい、俺たちはアイツに救われた立場だ。
この道場がまだ続けられているのも、ひとえにアイツのおかげさ。

かつてこのヤマブキシティは、エスパータイプの天下であり、俺たちは日陰者の扱いだった。

この道場も、もともとはヤマブキジムとして存在していた…。
エスパータイプが占拠してからは、ジムとしての立場を奪われてしまったがな。

ああ、当時のこの街では、エスパータイプと、俺たち格闘タイプには、明らかなヒエラルキー(上下関係)が存在した。

そんな中、当時はキルリアだったあいつはこの格闘道場に入門を志願した。
「エスパータイプ」であるにも関わらずだ。

驚いたなぁ。
当時のエスパータイプポケモンのほとんどは、俺たち格闘タイプを明らかに見下していたからな。

あいつは「武術を極めたい」と言って、この道場でメキメキと実力をつけていった。
念力で相手の動きを読み、間合いをつめて格闘術を叩き込む…。
エスパーと格闘のハイブリッドとして、あいつは敵なしだった。

ああ、この道場の中では、既に俺たちよりも強くなっていた。

その後あいつは、警察として職に就き、その実力で出世を続け「警視正」にまで上り詰めた。

まるで「格闘タイプ、ここに健在!」と言わんばかりの立ち振る舞いは、嬉しかったなぁ。
あいつが出世をするたびに、この街の格闘タイプの見方も変わってきたからな。

エルレイドは、俺たち格闘タイプの尊厳を取り戻してくれたんだ。

そして、そんな俺たちよりも強い愛弟子が、悲痛な助けを求めている。

そういうことだ。
俺は乗り込むが…お前はどうだ?

…聞くのか、それ?

ガハハ、愚問だったな。

行くぞ、相棒。

あたぼうよ。

おしまい

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